﹝白龍﹞を喚び出したサキカが、男がどこからともなく取り出した大剣を、アークの前へと瞬時に移動してそれで防いだのだ.おそらく、振り返れば柔らかな森の土がサキカが地を力強く蹴っ透明質酸功效ことにより、大きく抉れているだろう.男の大剣を受け止めたサキカを見て、奴はにやりと気味の悪い笑みを見せる.男が何かを言う前に、今度はガイアが動いた.無詠唱の上級魔法が、男に襲いかかる.サキカには、男を相手にするつもりは毛頭もなかった.しかし、直後のガイアの言葉により、考えを改めざるを得なくなる.「貴様……、ブルータリティか」──ブルータリティ.殺戮好きの大犯罪者であり、珍しい銀の魔力の持ち主.素顔も本名も不明であり、サキカは一度も会ったことはないが、ガイアは会ったことがあると言っていた人物.そして、──有舞に対して過去に何かをしたらしい人物である.男から目をそらすことはできない.しかし、もし今背後にいる有舞を振り返ることができたら、彼女は怯えた表情をしているに違いない.男はますます気味の悪い笑みを強め、さも愉しそうに嗤う.「ひはっ、おんらの名前、知ってんだぁ」焦点の合わない虚ろな銀の瞳が、爛々と輝いている.──異常者.その言葉が、サキカの脳裏を掠めた.ガイアに向けられていた、しかし焦点の合っていないブルータリティの銀の瞳が、ゆっくりとサキカに向けられた.そして何故か、彼は破顔した.ぞくり、と背中に気持ちの悪い感覚が走り抜ける..